しびれ
内科疾患と「しびれ」について
はじめに
「手や足がしびれる」という症状は、多くの方が経験するありふれたものです。長時間同じ姿勢をとった後に一時的に感じるしびれであれば心配はいりません。しかし、慢性的に続いたり、徐々に悪化したりする場合には、内科的な病気が隠れていることがあります。この記事では、比較的よく見られる内科疾患を中心に「しびれ」の原因や特徴を、わかりやすくご紹介します。
1. 糖尿病性末梢神経障害
糖尿病は日本でも患者数が多い病気であり、その合併症の一つに「末梢神経障害」があります。長期間高血糖が続くことで神経が障害され、特に足の先から「ジンジン」「ピリピリ」としたしびれが出てきます。
- 症状の特徴:左右対称に足先から徐々に広がり、夜間に強くなることが多いです。進行すると痛みや感覚の鈍さが加わり、けがややけどに気づきにくくなります。
- 対応:血糖コントロールが最も大切です。ビタミンB群の補充や神経の痛みに効く薬を使う場合もあります。日常生活では足の清潔と観察が重要で、小さな傷も見逃さないようにしましょう。
2. ビタミン欠乏症
栄養不足や消化吸収の異常により、ビタミンが不足すると神経障害を引き起こすことがあります。
- ビタミンB1欠乏(脚気):長期のアルコール多飲や偏った食生活で起こります。しびれに加えて筋力低下、重症では心不全を起こすこともあります。
- ビタミンB12欠乏:胃の切除後や高齢者に多く、手足のしびれのほか、貧血、ふらつき、記憶力低下などが見られることがあります。
- 対応:不足しているビタミンを補充することが基本です。早めに治療すれば症状が改善する可能性があります。
3. アルコールによる神経障害
長期間にわたる多量飲酒は、ビタミン不足やアルコールの毒性によって神経を傷つけます。
- 症状の特徴:足のしびれから始まり、進行すると手にも広がります。筋力低下や感覚鈍麻を伴うことがあります。
- 対応:まずは禁酒が最優先です。栄養改善とビタミン補充も有効です。症状が強い場合には薬で神経の痛みを和らげます。
4. 慢性腎不全(尿毒症性ニューロパチー)
腎臓の機能が低下し、老廃物が体にたまることで神経が障害されます。透析を受けている患者さんでは特に注意が必要です。
- 症状の特徴:左右対称に手足の先にしびれや感覚の低下が出ます。徐々に広がり、生活に影響することもあります。
- 対応:腎臓病のコントロールが第一です。透析を行いながら、症状に応じて薬を使用することもあります。
5. 甲状腺の病気
甲状腺ホルモンは全身の代謝をコントロールしているため、その異常は神経症状を引き起こすことがあります。
- 甲状腺機能低下症:倦怠感、体重増加、むくみに加えて、手足のしびれが出ることがあります。
- 甲状腺機能亢進症:代謝が過剰になり、筋力低下や末梢神経の症状を伴う場合があります。
- 対応:血液検査でホルモン値を確認し、薬でホルモンの状態を整えます。
6. 脳血管障害(脳梗塞・一過性脳虚血発作)
急に片側の手や足がしびれた場合は、脳の血管が原因の可能性があります。特に高血圧・糖尿病・喫煙などのリスクがある方は要注意です。
- 症状の特徴:片側のしびれに加え、顔のゆがみ、言葉が出にくい、視力の異常などが同時に出ることがあります。
- 対応:発症から時間が勝負です。少しでも疑わしい場合はすぐに救急車を呼んでください。
まとめ:よくある内科的原因と特徴
| 疾患 | しびれの特徴 | その他の症状 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 糖尿病性神経障害 | 足先から徐々に広がる、夜間に強い | 感覚鈍麻、痛み | 血糖コントロールと足の観察が大切 |
| ビタミン欠乏症 | 手足のしびれ | 貧血、ふらつき、筋力低下 | 栄養補充で改善の可能性あり |
| アルコール性神経障害 | 足から始まり手に広がる | 筋力低下 | 禁酒と栄養改善が必須 |
| 慢性腎不全 | 手足の末端に左右対称のしびれ | 倦怠感、むくみ | 腎疾患の治療が根本 |
| 甲状腺機能異常 | 手足のしびれ | 倦怠感、体重変化 | ホルモン補正で改善可能 |
| 脳血管障害 | 急に片側だけしびれる | 顔のゆがみ、言語障害、視覚異常 | 救急受診が必要 |
おわりに
しびれは一見ありふれた症状ですが、その裏に重大な内科疾患が隠れていることも少なくありません。特に「徐々に進むしびれ」「全身症状を伴うしびれ」「急に出て片側だけのしびれ」は注意が必要です。気になる症状があるときは、自己判断せずに早めに内科を受診してください。早期に原因を突き止めることで、治療が可能になったり、重症化を防げることがあります。

片山クリニック
院長 矢島 秀教
- 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本医師会認定産業医
