ふるえ
ふるえ(振戦)とは?原因から診断まで徹底解説
「手が震えて字が書きにくい」「人前でコップを持つときに手が震えて恥ずかしい」——このような症状に悩んでいる方は少なくありません。医学的にはこの「ふるえ」を振戦(しんせん)と呼びます。振戦は高齢の方だけでなく、若い世代でも起こることがあり、その原因は多岐にわたります。中には命に関わらない良性のものもありますが、神経の病気が背景にある場合もあるため、正しく理解することが大切です。
ふるえ(振戦)とは
振戦とは、筋肉が自分の意思とは無関係にリズミカルな収縮と弛緩を繰り返すことにより起こる震えを指します。最もよく見られるのは手のふるえですが、頭部、声帯、脚、体幹などに現れることもあります。
寒さや緊張、疲労などによる一時的なふるえは誰にでも起こります。例えば、冬の屋外で体が小刻みに震えるのは正常な反応です。しかし、繰り返し起こる、あるいは日常生活に支障をきたすような持続的なふるえは、何らかの病気のサインである可能性があります。
振戦の主な種類
振戦にはいくつかの種類があり、どのような状況で震えが出るかによって分類されます。
① 安静時振戦
体を動かしていない状態で現れるふるえです。特にパーキンソン病で見られることが多く、指で小さな丸薬を転がすような「ピル・ローリング」と呼ばれる動きが特徴です。
② 姿勢時振戦
腕を前に伸ばす、コップを持つなど「姿勢を保つ」ことで現れるふるえです。本態性振戦が代表的で、最も多い振戦の一つです。
③ 動作時振戦(企図振戦)
何かを取ろうと手を伸ばすときなど、特定の動作をするときに現れるふるえです。小脳の障害に関連し、手が目標に近づくほど震えが大きくなるのが特徴です。
④ 生理的振戦
健康な人にも起こる軽度のふるえです。ストレス、緊張、睡眠不足、カフェイン、アルコール離脱などで一時的に増強します。
振戦の代表的な原因
本態性振戦
もっとも一般的で、原因ははっきりと分かっていません。家族内で見られることが多く、遺伝的要素が関与していると考えられています。加齢とともに悪化することがありますが、進行は緩やかです。
パーキンソン病
神経伝達物質ドーパミンが不足することによって起こる進行性の神経変性疾患です。安静時にふるえが出やすく、体の片側から始まるのが典型です。歩行の小刻み化や動作の緩慢さ、筋肉のこわばりなども伴います。
内分泌・代謝性疾患
甲状腺機能亢進症では、ホルモンの過剰分泌により手指の細かいふるえや動悸、体重減少が見られます。また、肝臓や腎臓の病気、低血糖などでもふるえが起こることがあります。
薬剤性振戦
抗うつ薬、気管支拡張薬、ステロイド薬など、さまざまな薬が副作用としてふるえを引き起こすことがあります。
アルコールや中毒
アルコール依存症の方に見られる「離脱振戦」や、鉛・水銀などの中毒による神経障害でもふるえが生じることがあります。
専門医への紹介
振戦が続く場合、まずは当院へご相談ください。どの専門医へ受診するのが良いかのアドバイスを致します。
よくある質問(Q&A)
Q1. 手の震えは年齢のせいでしょうか?
A1. 必ずしもそうとは限りません。確かに加齢とともに本態性振戦は悪化することがありますが、若い世代でも起こります。また、甲状腺の病気や薬の副作用など、年齢以外の原因も多くあります。症状が気になる場合は、年齢のせいと決めつけず医療機関で相談することをお勧めします。
Q2. 緊張すると手が震えるのは病気ですか?
A2. 緊張による震えは「生理的振戦」と呼ばれ、健康な人にも起こる正常な反応です。ただし、極度に震えが強い場合や日常生活に支障をきたす場合は、社会不安障害などの可能性もあります。気になる症状があれば、心療内科でも相談できます。
Q3. 家族にも手の震えがある人がいます。遺伝しますか?
A3. 本態性振戦には遺伝的要素があり、家族内で見られることが多いです。しかし、必ず遺伝するわけではありません。また、同じ家族でも症状の程度や現れる年齢は個人差があります。
Q4. コーヒーを飲むと手が震えるのはなぜですか?
A4. カフェインには神経を興奮させる作用があり、生理的振戦を増強させることがあります。カフェインに敏感な方は、コーヒーや緑茶、エナジードリンクなどを控えることで症状が改善する場合があります。
Q5. どのような症状があれば早めに受診すべきですか?
A5. 以下のような症状がある場合は早めの受診をお勧めします:
- 片側の手だけに強いふるえが出る
- 字が書きにくい、食事やボタン掛けが困難
- 動作の遅れや歩行の異常を伴う
- 体重減少、動悸、発汗異常など他の症状がある
- 薬を飲み始めてから急にふるえが出た
Q6. 振戦は完全に治りますか?
A6. 原因によって異なります。甲状腺機能亢進症や薬剤性振戦など、原因を取り除けるものは改善が期待できます。本態性振戦やパーキンソン病では完治は難しいものの、適切な治療により症状をコントロールし、生活の質を向上させることは十分可能です。
まとめ
ふるえ(振戦)は一見すると単なる加齢や疲れのサインに見えるかもしれませんが、背景には本態性振戦やパーキンソン病、甲状腺疾患など、治療が必要な病気が隠れていることがあります。
「年齢のせいだから」と放置せず、気になる症状があれば早めに受診することが大切です。適切な診断により、日常生活の質を大きく改善できる可能性があります。

片山クリニック
院長 矢島 秀教
- 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本医師会認定産業医
