脳梗塞
【医師が解説】脳梗塞の症状・原因・治療・予防 | 知っておきたい基礎知識
脳梗塞は日本人の死亡原因上位を占める脳卒中の一つで、後遺症や再発のリスクも高い病気です。特に高齢化が進む現代では、誰もが身近に感じる疾患となっています。
「もし自分や家族に症状が出たら…」そんな不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
今回は、脳梗塞の症状・原因・治療・予防方法について、できるだけわかりやすく解説していきます。正しい知識を身につけて、いざという時に適切な対応ができるよう準備しましょう。
脳梗塞とは?基本を理解しよう
脳梗塞とは、脳の血管が詰まってしまう病気です。
血管が血のかたまり(血栓)などで詰まると、その先の脳細胞に酸素や栄養が届かなくなります。脳細胞は非常にデリケートで、血流が止まると数分~数時間のうちに障害を受けてしまいます。
そのため、発症してからいかに早く治療を開始できるかが、命や後遺症の有無を大きく左右するのです。
日本では、脳梗塞を含む脳卒中は心疾患・がんと並ぶ三大死因の一つです。さらに要介護状態になる原因としても上位に位置しており、病気そのものの辛さに加えて、社会的・家庭的な負担も大きな問題となっているのが現状です。
脳梗塞の症状―「FAST」チェックで見分ける
脳梗塞の症状は突然現れるのが特徴です。代表的な症状は以下の通りです:
- 顔の片側が下がる、ゆがむ(片側の顔面麻痺)
- 片方の手足がしびれる、力が入らない
- 言葉がうまく出ない、ろれつが回らない
- 視野の半分が見えにくい、物が二重に見える
- 激しい頭痛やめまい、ふらつき
救急現場でも使われる「FASTチェック」
特に重要なのが、「FAST」チェックです:
F(Face/顔):笑顔を作らせたときに片側が動かない
A(Arm/腕):両腕を挙げると片方が下がってしまう
S(Speech/言葉):話す内容がおかしい、理解できない
T(Time/時間):症状が出たら一刻も早く救急要請
このチェック方法は、医療従事者でない方でも簡単にできる優れた判断基準です。もし周囲の方やご自身にこのような症状が出たら、迷わず救急車を呼ぶことが重要です。
「様子を見てから…」「明日病院に行こう…」では手遅れになる可能性があります。
脳梗塞の種類と原因
脳梗塞は、原因や発症の仕組みによって大きく3つに分けられます。それぞれの特徴を理解することで、適切な予防策を講じることができます。
1. アテローム血栓性脳梗塞
動脈硬化によって脳の血管が徐々に狭くなり、そこに血栓ができて詰まるタイプです。
主な原因:糖尿病・高脂血症・喫煙など生活習慣病
特徴:比較的ゆっくり進行することが多い
2. 心原性脳塞栓症
心臓でできた血栓が血流に乗って脳へ運ばれ、血管を詰まらせるタイプです。
主な原因:心房細動という不整脈
特徴:突然重度の症状を起こすことが多い
3. ラクナ梗塞
脳の細い血管が詰まって起こるタイプです。
主な原因:高血圧
特徴:比較的小さな梗塞だが、繰り返すと認知症のリスクを高める
いずれのタイプも生活習慣病との関連が深いことが特徴です。
脳梗塞の治療―時間との勝負
脳梗塞の治療では、**「発症からの時間」**が最も重要な要素となります。
急性期治療(発症直後)
発症から4.5時間以内であれば、**t-PA(血栓溶解薬)**を点滴で投与できる可能性があります。これは血栓を溶かし、再び血流を改善する治療法です。
さらに条件が揃えば、血管内治療(カテーテルを使って血栓を直接取り除く方法)も治療選択肢となります。
治療における時間の重要性
いずれの治療にも「ゴールデンタイム」があり、時間が経つほど治療効果は著しく低下します。救急搬送が遅れると治療の選択肢が限られ、重篤な後遺症が残るリスクが高まります。
慢性期治療(急性期後)
急性期の治療後は、再発を防ぐために以下のような治療が継続されます:
- 抗血小板薬・抗凝固薬の内服
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症の管理
- リハビリテーションによる機能回復
脳梗塞の後遺症
脳梗塞は、適切な治療を受けても後遺症が残る場合があります。代表的な後遺症は以下の通りです:
- 片麻痺:体の片側の運動機能障害
- 言語障害:失語症や構音障害
- 嚥下障害:食べ物や飲み物の飲み込み困難
- 高次脳機能障害:記憶障害や注意力低下
後遺症はリハビリテーションによって改善する場合もありますが、完全に回復しないケースもあります。そのため「発症を予防すること」「迅速に治療を開始すること」が極めて重要です。
脳梗塞の予防方法
脳梗塞は生活習慣病と密接に関係しているため、日常生活の改善が最も効果的な予防策となります。
基本的な予防対策
血圧管理
高血圧は最大のリスク要因です。家庭血圧の定期測定を推奨します。
糖尿病の管理
血糖値の適切なコントロールが重要です。定期的な検査と治療継続が必要です。
脂質異常症の管理
LDLコレステロール値の適正化を図りましょう。
禁煙
喫煙は動脈硬化を促進する重要なリスク要因です。
生活習慣の改善
食生活の改善
- 減塩(1日6g未満を目標)
- 栄養バランスの取れた食事
- 野菜や魚類の積極的な摂取
適度な運動
- 有酸素運動(ウォーキング、水泳など)
- 筋力トレーニング
- 継続可能な運動プログラムの実施
その他の生活習慣
- 十分な睡眠(7-8時間)
- ストレス管理
- 定期的な健康診断の受診
特に定期的な健康診断により、リスク要因を早期に発見し、適切な管理を行うことが重要です。
まとめ
脳梗塞は突然発症し、生命予後や生活の質に重大な影響を与える疾患です。
しかし、生活習慣病の適切な管理により予防可能な疾患でもあります。また、発症した場合でも迅速な治療開始により予後の改善が期待できます。
重要なポイント
- FASTチェックによる症状の早期発見
- 生活習慣病の管理(血圧、血糖、脂質の適正化)
- 定期的な健康診断の受診
- 症状出現時の迅速な医療機関受診
当院では、脳梗塞の予防に重要な生活習慣病の管理と健康相談を実施しております。

片山クリニック
院長 矢島 秀教
- 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本医師会認定産業医
