循環器内科
見逃さないで-身近な循環器のサインを理解しよう
はじめに
循環器の病気は、心臓や血管に関わる重要な疾患群です。日本では高齢化が進み、心不全や不整脈などの循環器疾患は年々増え続けています。これらの病気は、命に関わるだけでなく、生活の質(QOL)にも大きく影響を及ぼします。
しかし、早期に発見し、生活習慣を見直し、必要に応じて治療を行うことで、多くの場合、病気の進行を遅らせたり、症状を軽くしたりすることが可能です。そのためには、患者さんご自身が「体からのサイン」を見逃さず、適切に受診することがとても大切です。
1. 心不全(Heart Failure)
概要
心不全とは「心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せない状態」を指します。急性で突然症状が出る場合もあれば、慢性的に徐々に悪化していく場合もあります。
症状
- 階段や坂道で息切れする
- 夜、横になると呼吸が苦しくなる(夜間呼吸困難)
- 足や顔がむくむ
- 疲れやすくなり、動作が鈍る
日本での現状
日本では心不全の患者数は年々増加しています。2014年には約11人/1000人だった有病率が、2019年には約15人/1000人まで増加しました。さらに、2030年には130万人に達すると予測されています。背景には、高齢化と生活習慣病(高血圧や糖尿病など)の増加があります。
診療のポイント
クリニックでは、症状の聞き取りと身体診察(心音・呼吸音・浮腫の有無)が基本です。必要に応じて心電図や血液検査(BNPなど)を行い、重症例では専門医と連携します。早期診断と生活指導が大切です。
2. 不整脈(特に心房細動)
概要
不整脈は「脈が不規則になる状態」です。その中でも心房細動は特に多く、高齢者に増える傾向があります。
症状
- 動悸(ドキドキする、脈が乱れる感じ)
- めまい、立ちくらみ
- 全く無症状の場合もある
日本でのデータ
心房細動は加齢とともに増加し、高齢者に多く見られる不整脈です。80歳以上では男性の約4~8%、女性の約2~4%が心房細動を持っているとされ、高齢化に伴い患者数は今後も増加すると予測されています。
診療のポイント
心房細動は脳梗塞のリスクを高めます。そのため、クリニックでは脈の乱れを見逃さず、心電図で確認し、リスクが高い患者さんには抗凝固薬の使用を検討します。症状が強い場合やコントロール困難例は専門医に紹介します。
3. 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
概要
心臓に酸素を送る冠動脈が動脈硬化で細くなり、血流が不足することで起こります。狭心症は「一時的な血流不足」、心筋梗塞は「血管が詰まって心筋が壊死する」状態です。
症状
- 胸の中央や左胸の痛み、圧迫感
- 痛みが首・肩・腕に広がる
- 冷や汗、吐き気、呼吸困難を伴うことも
日本の現状
日本における心疾患による死亡数は年間約37万人。依然として死因の上位を占めています。また、心疾患は寝たきりの原因としても重要です。
診療のポイント
胸痛や圧迫感を訴える患者さんを見逃さないことが最重要です。心電図や血液検査を行い、必要に応じて救急病院へ紹介します。また、生活習慣病の管理(血圧・血糖・脂質)と禁煙指導が再発予防に欠かせません。
4. 心臓弁膜症
概要
心臓の弁がうまく開閉できなくなる病気です。代表的なのは「大動脈弁狭窄症」と「僧帽弁閉鎖不全症」です。
症状
- 息切れ
- むくみ
- 胸部不快感
- 体力低下
診療のポイント
クリニックで心雑音を聴取することが診断の第一歩です。疑わしい場合は心エコー検査を依頼し、必要であれば循環器専門医へ紹介します。
5. 心筋症(特に拡張型心筋症)
概要
心筋の異常によって心臓が拡大し、ポンプ機能が落ちる病気です。遺伝やウイルス感染、アルコールなどが原因とされます。
症状
- 息切れ、むくみ
- 動悸、胸痛
- 失神
日本での頻度
拡張型心筋症は約2,500人に1人の割合で見られます。男性に多く、中年以降に発症しやすい病気です。
診療のポイント
診断には心エコーや心電図が必要です。治療はACE阻害薬、β遮断薬、利尿薬など。重症例ではデバイス治療(CRT、ICD)や心移植も検討されます。
6. 症状に注目する
循環器の病気は、特定のサインで気づくことができます。
- 息切れ・夜間呼吸困難:心不全の典型サイン
- 動悸:不整脈の代表的症状
- むくみ:心不全や弁膜症でよく見られる
「年のせい」と片付けず、症状が続くときは必ず相談してください。
7. 予防と生活習慣
循環器疾患の多くは生活習慣と深い関係があります。
- 禁煙:喫煙は心筋梗塞の大きなリスク
- 減塩:高血圧と心不全予防に重要
- 運動:ウォーキングや軽い体操を継続
- 健診活用:血圧・血糖・コレステロールの定期チェック
- 早期受診:「少し変だな」と思ったらすぐに相談
まとめ
- 心不全、不整脈、虚血性心疾患、弁膜症、心筋症はいずれも頻度が高く、見逃せない循環器疾患です。
- 息切れ、動悸、むくみといった症状は体からの大切なサインです。
- 早めにクリニックで相談することで、病気の進行を防ぎ、生活の質を保つことが可能です。
- 生活習慣の改善と定期的な診療で、健康な毎日を守りましょう。

片山クリニック
院長 矢島 秀教
- 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本医師会認定産業医
