肥満の治療方法
最新ガイドラインでみる肥満症の治療法:食事・運動・薬物・手術の適切な組み合わせ
肥満症は、体脂肪が過剰に蓄積して健康に悪影響を及ぼしている状態を指し、それに伴う合併症を予防・改善することが治療の目的です。日本では「肥満症診療ガイドライン2022」が改訂され、治療の戦略や目標が明確になっています。以下はその内容にもとづく、治療方法の全体像とポイントです。
肥満症とは何か・診断基準
肥満とは「体格指数(BMI)」が一定以上であることだけではなく、肥満によって起こる健康障害(高血圧・2型糖尿病・脂質異常症・非アルコール性脂肪性肝疾患など)が存在し、それらが減量により改善または予防されうる状態を「肥満症」と呼びます。高度肥満症(より重い肥満)とは、合併症や生活の質への影響が強い場合を指します。
減量目標
- 肥満症の場合は、まず 現体重の3%以上の減少 を目指します
- 高度肥満症では、より大きな減量、例えば 5〜10% の減量を目指すことが提案されています
- 減量目標は、3~6か月を目安に設定し、それに応じて生活習慣の改善を評価します
基本治療(第一段階)
減量においては、まず以下の非薬物療法(=生活習慣の改善)が土台となります。
1. 食事療法
- エネルギー収支(摂取カロリー ≦ 消費カロリー)をマイナスにする
- 脂肪分の多い食事や揚げ物、砂糖の多い飲み物・間食を控える
- バランスのとれた栄養(タンパク質、野菜・果物・食物繊維を十分に)を確保。咀嚼をゆっくりするなど、食べ方・習慣にも注意
2. 運動療法
- 有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)を定期的に行う
- 筋力トレーニングを取り入れ、基礎代謝を維持・向上させることも大切
3. 行動療法・生活習慣改善
- 食習慣や生活の中の行動(間食、食事時間、飲酒、睡眠など)を見直す
- 体重の記録、自分の行動パターンの把握(何をいつどれくらい食べるか、運動量など)を行う
- ストレスや睡眠、メンタル面のケアも重要。睡眠不足や過度のストレスは肥満を悪化させる要因になります
薬物療法
非薬物療法を一定期間(通常3~6か月)続けても十分な減量効果が得られない場合や、肥満による合併症が重く迅速な改善が望まれる場合には、薬物療法が検討されます。
日本でも近年、GLP-1受容体作動薬などの薬剤が注目されており、試験や使用の対象が増えつつあります。
薬物療法を始める基準
- BMIが一定以上あること(高度肥満など)
- 肥満に起因または関連する合併症が存在すること(糖尿病、高血圧、高脂血症など)
- 非薬物療法での減量が不十分であったこと
薬物療法中は副作用や安全性、また薬をやめた後も体重維持のための生活習慣改善が不可欠です。
維持・フォローアップの重要性
減量できた後、「元に戻さないこと」が大きな課題です。多くの人が減量後に体重が戻ってしまう傾向があります。これを防ぐために、次のようなフォローが必要です:
- 定期的な体重測定・体組成のチェック
- 食事・運動・行動習慣の継続
- 睡眠の確保やストレス管理
- 必要に応じて医療機関でのサポート・相談(栄養士、運動指導、心のケア)
まとめ
肥満症の治療は一律ではなく、個々の状況(肥満の程度、合併症の有無、生活環境、希望など)に応じて段階的に進めることが基本です。まずは生活習慣を見直すことが土台であり、それで十分な効果が出ない場合には薬物療法や手術も含めて医師と相談しながら選択します。少しの減量でも、内臓脂肪の低下や血糖・血圧・脂質の改善など健康に良い影響が生じることが分かっています。
肥満症を放置すると、将来的に心臓病、糖尿病、脳卒中など重い病気を引き起こすリスクが高まります。逆に、正しい方法で取り組むことで、健康寿命を延ばし、日常生活の質(QOL=クオリティ・オブ・ライフ)を高めることができます。

片山クリニック
院長 矢島 秀教
- 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本医師会認定産業医
