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心房細動とは?高齢になるほど増える不整脈と脳梗塞のリスク

[2026.09.07]

 

 

「脈が急に速くなる」「健診で脈の乱れを指摘された」——自覚症状がなくても進行し、脳梗塞につながることがある不整脈について、原因から治療まで整理しました。

「脈が急に速くなる」「心臓がバラバラに動いているように感じる」「健診で脈の乱れを指摘された」。このようなときに考えられる病気の一つが、心房細動です。

心房細動は、代表的な不整脈の一つです。動悸や息切れを起こすことがありますが、自覚症状がまったくない人も少なくありません。そのため、本人が気づかないまま経過し、脳梗塞を起こして初めて見つかることもあります。

特に注意したいのは、心房細動が年齢とともに増える病気であることです。日本では高齢化が進んでいるため、心房細動の早期発見と適切な治療は、健康寿命を守るうえでますます重要になっています。

心房細動とはどのような不整脈?

心臓は、右心房、左心房、右心室、左心室という4つの部屋からできています。正常な心臓では、右心房にある「洞結節」という場所から規則正しい電気信号が発生し、その信号が心房から心室へ伝わることで、一定のリズムで血液を全身に送り出しています。

心房細動になると、心房内で非常に速く不規則な電気信号が発生します。その結果、心房はまとまって収縮できず、小刻みに震えるような状態になります。心室に伝わる電気信号も不規則になるため、脈の間隔がバラバラになるのが特徴です。

心房細動には、発作が始まっても自然に止まる「発作性心房細動」、7日以上続くことが多い「持続性心房細動」、長期間にわたって続く「長期持続性心房細動」などがあります。最初は短時間の発作だけでも、時間の経過とともに発作が長くなり、持続するようになることがあります。

心房細動ではどのような症状が現れる?

心房細動の代表的な症状は、動悸です。「心臓がドキドキする」「脈が飛ぶ」「胸の中がざわざわする」と表現する人もいます。

そのほか、息切れ、胸の不快感、めまい、ふらつき、疲れやすさ、運動時の息苦しさ、全身のだるさなどが現れることがあります。心臓の動きが非常に速くなると、血圧が低下したり、胸痛や失神を起こしたりする場合もあります。

一方で、心房細動があっても症状をほとんど感じない人もいます。無症状だから安全というわけではありません。症状がなくても心臓の中に血栓ができ、脳梗塞につながる危険性があるからです。

家庭用血圧計で「脈間隔不規則」などの表示が繰り返し出る場合や、自分で手首の脈を触れたときにリズムが不規則だと感じる場合には、一度医療機関で心電図検査を受けることが大切です。

心房細動は年齢とともに増える

心房細動の有病率は、年齢が高くなるほど上昇します。国内の健診データを用いて、30歳から89歳までの日本人一般住民を調べた研究1)では、男性の心房細動有病率は年齢とともに次のように上昇していました。

男性の心房細動有病率(年代別)
30歳代0.06%
50歳代0.99%
60歳代2.97%
70歳代5.61%
80歳代8.10%

女性でも、30歳代の0.01%から、60歳代で0.44%、70歳代で1.31%、80歳代で3.52%へと、年齢とともに上昇しています1)。この研究からも、男女ともに加齢に伴って心房細動が増えることがわかります。特に高齢の男性では、決して珍しい病気ではありません。

年齢とともに心房細動が増える背景には、心房の筋肉や電気的な性質の変化、心臓の線維化、高血圧や心臓病の増加などがあります。また、年齢だけでなく、高血圧、糖尿病、肥満、睡眠時無呼吸症候群、心不全、心臓弁膜症、甲状腺機能異常、慢性腎臓病なども心房細動と関係します。

過度の飲酒、喫煙、運動不足、睡眠不足などの生活習慣も、発症や悪化に影響する可能性があります。若い人には起こらない病気ではありませんが、年齢が上がるほど定期的に脈や心電図を確認する意義が大きくなります。

心房細動が脳梗塞を引き起こす理由

心房細動で最も注意しなければならない合併症の一つが、脳梗塞です。

心房が正常に収縮できなくなると、特に左心房の一部で血液の流れがよどみやすくなります。血液がよどむと、心臓の中に血の塊である「血栓」ができることがあります。この血栓が心臓から流れ出し、血流に乗って脳の血管まで運ばれ、そこで血管を塞ぐと脳梗塞が起こります。

このように、心臓内でできた血栓が原因となる脳梗塞を「心原性脳塞栓症」と呼びます。比較的大きな血栓が脳の太い血管を突然塞ぐことがあるため、梗塞する範囲が広くなりやすく、重い麻痺や意識障害、言語障害などを残すことがあります。心原性脳塞栓症は、ほかのタイプの脳梗塞と比べて重症化しやすいとされています。

脳梗塞の28.8%を占める心原性脳塞栓症

国内の『脳卒中データバンク2021』に基づく集計2)では、近年の脳梗塞の病型別頻度は次のように報告されています。

28.8% 脳梗塞に占める心原性脳塞栓症の割合。アテローム血栓性脳梗塞31.5%、ラクナ梗塞28.2%と合わせて、脳梗塞の三大病型を構成しています2)。

つまり、この国内データでは、脳梗塞のおよそ10人に3人が心原性脳塞栓症に分類されていました。心原性脳塞栓症の原因は心房細動だけではありませんが、心房細動はその主要な原因です。なお、28.8%という割合は『脳卒中データバンク2021』に収載された症例をもとにした病型別頻度であり、調査時期、対象施設、診断方法などによって割合が異なる可能性があります。

この数字からも、心房細動の発見と脳梗塞予防が、脳卒中対策において非常に重要であることがわかります。

心房細動の原因と危険因子

心房細動は、加齢に伴う心臓の変化だけでなく、複数の病気や生活習慣が重なって発症することがあります。

代表的な危険因子には、高血圧、心不全、心臓弁膜症、心筋梗塞などの心疾患、糖尿病、肥満、慢性腎臓病、甲状腺機能亢進症、睡眠時無呼吸症候群などがあります。

特に高血圧は、心臓に長期間負担をかけ、心房の拡大や構造変化を招くため、心房細動の重要な危険因子です。飲酒量が多い人では、飲酒をきっかけに発作が出ることもあります。また、発熱、脱水、過労、強いストレス、睡眠不足などを契機として発作が起こる場合もあります。

危険因子を一つずつ整えることは、心房細動の発症や再発を抑えるためだけでなく、脳梗塞や心不全を防ぐうえでも大切です。

どのように診断する?

心房細動の診断には、心電図検査が必要です。診察時に心房細動が続いていれば、通常の12誘導心電図で診断できることがあります。

ただし、発作性心房細動は診察時には止まっていることがあります。その場合は、24時間以上心電図を記録するホルター心電図、携帯型心電計、長期間記録できる心電図機器などを使用して発作を捉えます。

最近では、心拍を測定できる腕時計型の機器などから心房細動の可能性を指摘される人もいます。こうした機器は異常に気づくきっかけにはなりますが、それだけで確定診断はできません。異常が表示された場合には、記録を医師に見せ、医療用心電図で確認する必要があります。

診断後は、心臓超音波検査、血液検査、胸部エックス線検査などを行い、心臓の状態や背景にある病気を調べます。

治療の三つの目的

心房細動の治療ガイドライン3)では、大きく分けて「脳梗塞を予防する」「速すぎる脈を整える」「正常なリズムを保つ」という三つの目的が示されています。

最も重要なのが、脳梗塞の予防です。年齢、高血圧、糖尿病、心不全、脳梗塞の既往などをもとに脳梗塞の危険度を評価し、必要な場合には抗凝固薬を使用します。

抗凝固薬は、血液を固まりにくくして心臓内の血栓形成を防ぐ薬です。現在はワルファリンのほか、直接作用型経口抗凝固薬であるDOACが広く使用されています。どの薬が適しているかは、年齢、腎機能、体重、ほかの病気、服用中の薬、出血リスクなどを考慮して判断します。

脈が速すぎる場合には、脈拍数を抑える薬を使用します。また、正常なリズムに戻して維持する目的で、抗不整脈薬、電気的除細動、カテーテルアブレーションなどを行うことがあります3)。

カテーテルアブレーションは、足の付け根などの血管から細いカテーテルを心臓まで進め、心房細動の原因となる異常な電気信号を遮断する治療です。症状の程度、心房細動の持続期間、年齢、心臓の状態などを考慮して適応を判断します。

抗凝固薬を自己判断で中止しない

抗凝固薬を服用している人のなかには、あざができやすい、出血が心配、症状がなくなったなどの理由で、薬をやめたいと考える人もいるかもしれません。

しかし、心房細動の発作を感じなくなっても、心房細動が完全になくなったとは限りません。発作が無症状で起きていることもあります。また、脳梗塞の危険性は、症状の強さだけでなく、年齢や高血圧、糖尿病、過去の脳梗塞などによって決まります。

抗凝固薬を自己判断で中断すると、脳梗塞の危険性が高まる可能性があります。出血や副作用が心配な場合にも、まず処方した医師へ相談してください。

日常生活で気をつけること

心房細動の管理では、薬や手術だけでなく、生活習慣を整えることも重要です。

家庭で血圧を測り、高血圧がある場合は適切に治療しましょう。体重が増えすぎないようにし、無理のない範囲で定期的に体を動かすことも大切です。ただし、心房細動の状態や心臓病の有無によって適切な運動量は異なるため、運動を始める前に医師へ相談したほうがよい場合があります。

飲酒によって発作が増える人は、飲酒量を減らすか、禁酒を検討します。禁煙、十分な睡眠、脱水の予防、過労を避けることも心がけましょう。強いいびきや日中の眠気がある人は、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性があるため、医療機関への相談が勧められます。

すぐに救急車を呼ぶべき症状

⚠ 脳卒中が疑われるサイン

突然、片側の顔や手足が動かしにくくなった、ろれつが回らない、言葉が出ない、相手の話を理解できない、片目が見えにくい、立てないほどふらつく、経験したことのない激しい頭痛が起きた場合は、脳卒中の可能性があります。

いったん症状が改善しても、一過性脳虚血発作の可能性があるため、様子を見てはいけません。脳梗塞の治療は発症からの時間が非常に重要です。自分で運転せず、速やかに救急車を要請してください。

また、強い胸痛、失神、冷や汗を伴う息苦しさ、意識がもうろうとするなどの症状がある場合も、緊急の診察が必要です。

まとめ

心房細動は、心房が不規則に震える代表的な不整脈です。動悸や息切れを起こすことがありますが、無症状のまま進行することもあります。

国内研究では、心房細動の有病率は男女とも年齢とともに上昇し、特に高齢者で多くなることが示されています1)。また、『脳卒中データバンク2021』に基づく報告では、心原性脳塞栓症は脳梗塞の28.8%を占めていました2)。

心房細動が見つかった場合には、症状を抑えるだけでなく、将来の脳梗塞を防ぐという視点が欠かせません。脈の乱れ、動悸、息切れがある場合や、家庭用血圧計などで不規則な脈を繰り返し指摘された場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。

引用文献

1)
小坂加麻理ほか.日本人一般住民の年齢階級別心房細動有病率と罹患率.人間ドック.2021;36巻4号:539-545.
2)
小林祥泰ほか編.脳卒中データバンク2021.中山書店.2021.
3)
日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン.2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン.2020.

片山クリニック
院長 矢島 秀教

  • 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本医師会認定産業医
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