防げるがん、 始まりは知ることから。
がんは「生活習慣」や「遺伝」が原因と思われがちですが、一定の割合で感染症が関与しています。また、その多くが予防可能だという点は大切です。
がんに関わる、5つの感染症
- 感染経路
- 主に性的接触
- 関連するがん
- 子宮頸がん患者の90%以上でHPV感染が確認されています[2]。中咽頭がんや肛門がんとの関連も報告されています。
- 予防・対策
- ワクチン接種(若年期に高い効果あり)、定期的な子宮頸がん検診
- 特徴
- 胃の中に住みつき、慢性的な胃炎を起こす細菌です
- 関連するがん
- 胃がん(長期間の炎症が粘膜にダメージを蓄積させます)
- 予防・対策
- 検査と除菌治療。国内の系統的レビューでは、除菌により胃がん罹患リスクがほぼ半減(相対リスク0.42)し、科学的根拠は「確実」と評価されています[3]
- 感染経路
- 血液や体液を介して感染します
- 関連するがん
- 肝臓がん(肝細胞がん)。国内では慢性肝炎ウイルス感染が主な発生要因とされています[4](慢性肝炎 → 肝硬変 → 肝がんと進行するケースが少なくありません)
- 予防・対策
- B型:ワクチン(日本では定期接種)。C型:ワクチンはありませんが、高効果の抗ウイルス薬で治癒が可能です
- EBV
- 多くが幼少期に無症状で感染します。ごく一部で一部のリンパ腫・上咽頭がんに関与します
- HTLV-1
- 成人T細胞白血病の原因です。日本では九州・沖縄地方を中心に感染者が多く、2010年から妊婦健診でHTLV-1抗体検査が公費で実施され、母子感染対策が進められています[5]
「知らないうちに」感染している
これらの感染症に共通するのは、自覚症状がほとんどないまま長期間経過し、その間にがんのリスクが静かに高まっていくという点です。だからこそ、検査やワクチンといった予防策の重要性が強調されています。
今は「がんになる前に防ぐ」が現実的な目標になっています。
HPVワクチンやB型肝炎ワクチンの普及、ピロリ菌除菌の推進は、その代表的な取り組みです。一方で課題も残っています。HPVワクチンは不安や誤解から接種率が伸び悩んだ時期がありましたが、国内外の研究で安全性と有効性は十分確認されており、現在は積極的な接種が推奨されています。肝炎ウイルスについても「検査を受けたことがない」人が多く、潜在的な感染者が見逃されている可能性があります。
今、始められること
私たち一人ひとりができることは、決して難しいものではありません。
- 適切な年齢でHPV・B型肝炎ワクチンを接種する
- 子宮頸がんなど、対象となる定期検診を受ける
- ピロリ菌・肝炎ウイルスの検査を一度は受けておく
- 陽性の場合は除菌治療・抗ウイルス治療につなげる
感染症によるがんは、「予防できるがん」です。医療の進歩によって、がんは静かに「防ぐ時代」へと変わりつつあります。今この瞬間からできる一歩が、未来の健康を大きく左右します。
参考文献
- 国立がん研究センター がん対策研究所.日本人におけるがんの原因の寄与度推計(JAPAN PAFプロジェクト)「感染症に起因するがんの割合」(2015年推計).https://epi.ncc.go.jp/paf/evaluation/9154.html
- 厚生労働省.「HPVワクチンに関するQ&A」.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_qa.html
- 国立がん研究センター がん対策研究所.「ヘリコバクター・ピロリ菌除菌と胃がんリスク」(日本の疫学研究に基づく評価).https://epi.ncc.go.jp/can_prev/evaluation/8790.html
- 国立がん研究センター がん情報サービス.「肝臓がん(肝細胞がん) 予防・検診」.https://ganjoho.jp/public/cancer/liver/prevention_screening.html
- 厚生労働省.「HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス)に関する情報 妊婦の方へ」.https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou29/ninpu.html

片山クリニック
院長 矢島 秀教
- 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本医師会認定産業医
