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「目は見えているから大丈夫」は危険?糖尿病と眼科受診の深い関係

[2026.04.24]

糖尿病と診断されたとき、多くの方が最初に気にされるのは血糖値や食事制限、運動習慣のことではないでしょうか。毎日の血糖コントロールに意識を向けることはとても大切なことです。しかし実は、それと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「目の健康を守ること」です。

糖尿病は、高血糖の状態が続くことで全身の血管が少しずつダメージを受けていく病気です。太い血管だけでなく、目の奥にある非常に細い血管にも影響が及びます。その結果として引き起こされるのが「糖尿病網膜症」です。この合併症は、糖尿病患者さんの多くが将来的に直面するリスクのひとつであり、日常生活に大きな影響をもたらします。

糖尿病網膜症とはどんな病気か

糖尿病網膜症は、目の奥にある「網膜」という薄い膜の血管が障害を受けることで起こる病気です。網膜はカメラでいえばフィルムの役割を果たしており、外から入ってきた光を電気信号に変えて脳に伝える、視覚において欠かせない組織です。

糖尿病によって血管が傷つくと、網膜への血液の供給が滞り、出血や浮腫(むくみ)、さらには新しい異常な血管(新生血管)が生じることがあります。これらの変化が積み重なることで、網膜の機能が失われ、視力の低下や最悪の場合は失明につながります。

糖尿病網膜症は、日本における成人の失明原因の上位を長年にわたって占めています。決して他人ごとではなく、糖尿病と診断されたすべての方にとって、向き合うべき重要な問題です。

なぜ「気づかないうちに」進行するのか

糖尿病網膜症のもっとも恐ろしい特徴は、初期の段階では自覚症状がほとんどないことです。視力の低下や視界のぼやけ、黒い点が見えるといった症状が現れる頃には、すでに病気がかなり進行していることが少なくありません。

「昨日まで普通に見えていたのに」という状況になってから受診しても、すでに治療の選択肢が限られてしまっているケースがあります。特に、出血が網膜全体に広がったり、網膜が剥がれてしまったりすると、視力の回復は非常に困難になります。

もうひとつ重要なのは、血糖値が比較的コントロールされている方でも、長年の糖尿病の経過の中で網膜症が進行していることがある点です。「血糖値が安定しているから目は大丈夫」という思い込みは、残念ながら当てはまらない場合もあります。糖尿病の罹病期間が長ければ長いほど、眼科的なリスクは積み重なっていきます。

「症状がないから大丈夫」と考えていると・・・

多くの患者さんが「見え方は変わっていないから眼科には行かなくていい」とおっしゃいます。その気持ちはよく理解できます。忙しい日々の中で、症状のない受診は後回しになりがちです。しかし、糖尿病網膜症に関しては、この「症状がないから大丈夫」という考え方が視力を守る上で大きな落とし穴になります。

網膜症は自覚症状が現れるよりもずっと前から、静かに着実に進行します。自覚症状がないということは「病気がない」ことを意味するのではなく、「まだ気づいていないだけ」という可能性があるのです。

だからこそ、何も感じていない今の段階で受診することが、視力を守るための最善策です。早期に発見できれば、治療によって進行を食い止めることができます。何か症状が出てから行動するのでは、手遅れになるリスクがあります。

「見えているから安心」ではなく、「これからも見え続けるために、今行動する」という意識の転換が、将来の生活の質を大きく左右します。

糖尿病治療と眼科受診はセットで考える

近年、糖尿病の診療においては「内科だけで完結する治療」から「関連する診療科と連携した包括的な管理」へとシフトしています。血糖コントロールはもちろん大切ですが、それだけでは合併症を完全に防ぐことはできません。目・腎臓・神経など、糖尿病が影響を与えるさまざまな臓器を定期的にチェックし、異常を早期に発見することが、長く健康でいるための鍵です。

なかでも眼科との連携は特に重要視されています。内科(かかりつけ医)で血糖管理を行いながら、定期的に眼科で目の状態を確認することが、標準的な糖尿病治療の一部として位置づけられています。「眼科は目に何か困ったときに行くところ」という認識を改め、「糖尿病の管理として定期的に通う場所」として捉えていただくことが大切です。

眼科と内科が情報を共有し連携することで、患者さん一人ひとりにとってより安全で質の高い医療が提供できるようになります。これは決して特別な対応ではなく、糖尿病治療における標準的な流れです。

当院でのサポートについて

当院では、糖尿病で通院されている患者さんに対し、積極的に眼科受診をおすすめしています。診察の際に医師から眼科受診の必要性についてご説明し、必要に応じて信頼できる眼科医療機関へのご紹介を行っています。紹介状をお渡しすることもあり、患者さんが安心してスムーズに受診できるよう配慮しています。

眼科での検査結果は当院とも共有され、今後の治療方針に活かされます。「どこの眼科に行けばいいかわからない」「眼科受診は初めてで不安」という方も、遠慮なくスタッフにご相談ください。受診先の選択から受診後のフォローまで、当院が窓口となってサポートいたします。

糖尿病は、一生付き合っていく病気です。だからこそ、合併症を防ぎながら、できるだけ長く健やかな生活を送ることが大切です。目の健康はその中でも特に重要であり、視力を失うことは日常生活のあらゆる場面に影響を与えます。症状がなくても受診することに意味があります。早期発見・早期対応こそが、視力を守る最大の手段です。

ご不明な点やご不安なことがあれば、診察時にお気軽にお声がけください。

片山クリニック
院長 矢島 秀教

  • 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本医師会認定産業医
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