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妊娠中・授乳中の処方について|よくある症状と薬の考え方

[2026.09.01]

 

 

「妊娠中だから」「授乳中だから」と、体調が悪くても薬を我慢してしまう方は少なくありません。しかし、病気を十分に治療しないことが、かえって母体や赤ちゃんにとって不利益になる場合もあります。このコラムでは、当院でよくご相談いただく症状について、代表的な対応の考え方をご紹介します。

※ご注意 ここでご紹介する内容は、成人外来での代表的な対応例です。妊娠週数、症状の程度、基礎疾患、腎機能、併用薬、アレルギー歴などによって適切な薬剤や用量は異なります。実際の治療方針は、医師が一人ひとりの状況を確認したうえで判断します。自己判断での市販薬の追加は避け、必ず医師・薬剤師にご相談ください。

1 妊娠中の発熱・咳・痰・咽頭痛

肺炎やインフルエンザ、COVID-19など重症な感染症を疑う所見がなく、いわゆる「かぜ」に対して症状を和らげる治療を行う場合の一例です。

処方例
薬剤名 1回量 回数 タイミング 日数
アセトアミノフェン錠 250mg 2錠 1日3回 毎食後 5日分
デキストロメトルファン臭化水素酸塩錠 15mg 1錠 1日3回 毎食後 5日分
アンブロキソール塩酸塩錠 1錠 1日3回 毎食後 5日分
トローチ 1錠 頓用 のどが痛いとき 12回分
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妊娠中の発熱・疼痛にはアセトアミノフェンが第一選択として広く使用されています。国立成育医療研究センターも、妊娠中のアセトアミノフェンは従来どおり使用可能としています。

一方、ロキソプロフェンやイブプロフェンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、とくに妊娠後半で胎児への影響が問題となるため、自己判断での使用や漫然とした投与は避けましょう。

⚠ こんな症状があれば要注意 38℃以上の高熱が続く、呼吸が苦しい、胸が痛い、SpO₂(血中酸素飽和度)の低下、全身状態が悪いといった場合は、症状を抑える薬だけで様子を見ず、原因となる病気の検索を優先します。

2 妊娠中のアレルギー性鼻炎

薬物療法が必要な場合には、妊娠中の使用経験が比較的豊富な抗ヒスタミン薬などを検討します。

処方例 A
薬剤名 1回量 回数 日数
フェキソフェナジン塩酸塩錠 60mg 1錠 1日2回 14〜28日分
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処方例 B
薬剤名 1回量 回数 日数
セチリジン塩酸塩錠 10mg 1錠 1日1回 14〜28日分
点鼻薬 — 1日2回 —
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鼻の症状が強い場合には、点鼻薬を併用する治療を検討することもあります。


3 妊娠中の便秘

まずは水分摂取、食物繊維の摂取、適度な運動などの生活習慣の調整を行い、それでも便秘が続く場合には浸透圧性下剤などを検討します。

処方例
薬剤名 1回量 回数 備考
酸化マグネシウム錠 330mg 1〜2錠 1日3回 便の状態に応じて調整
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便が軟らかくなりすぎる場合は減量します。腎機能が低下している方では高マグネシウム血症のリスクがあるため、腎機能を考慮したうえで使用します。必要に応じて、刺激性下剤を短期間追加することもあります。


4 妊娠中・授乳中のインフルエンザワクチン
注射用の不活化インフルエンザワクチンは、妊娠中でも接種可能です 妊娠初期を含め、妊娠週数を理由として接種を避ける必要はないとされています。

国立成育医療研究センターでは、妊娠初期に接種した妊婦さんでも先天異常発生率の増加は認められておらず、むしろ妊娠中のインフルエンザ感染予防のために接種が勧められるとしています。

接種例
ワクチン名 接種量 回数
インフルエンザHAワクチン(成人) 通常0.5mL 1回
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※使用する製剤の最新添付文書に従います

添付文書上、13歳以上では1回または2回接種とされていますが、厚生労働省は健康な成人について0.5mLの1回接種で十分な抗体上昇が得られるとの知見を示しています。

⚠ 重要な注意点 経鼻弱毒生インフルエンザワクチンは、妊婦の方には使用しません。
ワクチンの種類 妊娠中の接種
注射用 不活化インフルエンザワクチン 〇
経鼻弱毒生ワクチン ×

5 授乳中の気管支喘息・夜間の咳

夜間に咳が出る場合は、喘息のコントロールが十分でない可能性があります。単純に咳止めを追加するのではなく、吸入ステロイドを中心に治療内容を見直すことが大切です。

国立成育医療研究センターでは、ブデソニドやモンテルカストは授乳中に安全に使用できると考えられる薬剤として掲載されています。

処方例
薬剤名 用法 備考
ブデソニド吸入剤 1日2回吸入 必要に応じて発作時の気管支拡張薬を併用
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夜間の症状が残る場合には、吸入の手技や服薬状況を確認したうえで、以下のような追加を検討します。

薬剤名 1回量 回数 タイミング
モンテルカスト錠 10mg 1錠 1日1回 就寝前
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授乳中という理由だけで喘息治療薬を中断する必要は通常ありません 母体の喘息を適切にコントロールすることが、母子双方にとって重要です。

まとめ ── 「妊娠中・授乳中=薬が使えない」ではありません

・「妊娠中・授乳中だから薬は一切使えない」というわけではありません。病気を十分に治療しないことが、かえって母体や赤ちゃんにとって不利益になる場合もあります。

・妊娠中は妊娠週数によって薬剤の影響が異なります。自己判断で市販薬を追加せず、必ず医師・薬剤師にご確認ください。

・妊娠中の発熱にはアセトアミノフェンが第一選択です。

・妊娠中でも注射用の不活化インフルエンザワクチンは接種可能で、感染予防のために接種が勧められています。

・授乳中も、多くの薬剤は母乳中への移行量が少なく、適切な薬剤を選択すれば治療と授乳を両立できます。

参考文献

  1. 国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」
    https://www.ncchd.go.jp/kusuri/
  2. 国立成育医療研究センター「妊娠と薬について知りたい方へ」
    https://www.ncchd.go.jp/kusuri/process/

片山クリニック
院長 矢島 秀教

  • 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本医師会認定産業医
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