なぜ日本脳炎ワクチンは4回接種なのか?
日本脳炎ワクチンは不活化ワクチンで、ウイルスそのものの感染力はなく、ワクチンで作られる免疫(抗体)が体の中でウイルスを想定して反応します。ただし、1回だけでは十分な免疫(防御力)がつきにくいため、段階的に複数回注射を行う必要があります。
日本脳炎という病気について
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスが原因で起こる重篤な感染症です。ウイルスは豚などの動物の体内で増殖し、その血を吸った蚊(主にコガタアカイエカ)を媒介して人に感染します。日本国内での患者数は年間10例前後と少なく、ワクチン接種の普及により激減していますが、発症した場合の致死率は20〜40%と非常に高く、生存しても約半数の患者に精神障害や運動障害などの重い後遺症が残ります。
感染しても多くの場合は無症状で経過しますが、100〜1000人に1人の割合で脳炎を発症すると考えられています。発症すると高熱、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんなどの症状が現れ、有効な治療法がないため、予防接種が最も重要な対策となっています。日本以外でも東アジアから南アジア、東南アジアにかけて広く流行しており、海外渡航時のリスクとしても認識されています。
基礎免疫づくり:1〜3回目の接種
最初の1回目と2回目(初回接種)では、免疫反応を起こすために体にワクチンを2回打ち、免疫系を「ウイルスを識別する準備状態」にします。しかし、2回接種しただけでは免疫が十分でない場合があるため、時間を置いて3回目を打つことで免疫の質と量(抗体価)を高め、定着させる役割があります。
医学的なデータでは、1〜2回でもある程度の免疫はできますが、3回以上接種することでより多くの人が高い抗体価を持つようになることが示されています。この3回で基礎的な免疫を確実に獲得することが、日本脳炎予防の第一段階です。
免疫を長持ちさせる:4回目(2期接種)
3回で基礎免疫は獲得できますが、時間が経つと抗体価は低下していきます。そこで9歳ごろに2期接種としてもう1回打つことで、再度免疫を強化し長期間の防御力を維持させることが目的です。この4回目は、子どもが学校生活や日常生活で蚊に刺される機会が増える年齢に合わせてブースト(免疫の再強化)をかける役割も果たしています。
4回接種のメリット
4回接種することで、免疫の確実な形成が可能になります。初回だけでは十分な抗体をつくれない場合でも、複数回打つことで多くの人が免疫を獲得します。また、時間が経つと抗体価が下がるため、4回目の接種で再強化することが重要です。そして何より、十分な免疫を持つことで、日本脳炎による重症化や後遺症、死亡のリスクを大きく減らすことができます。
接種スケジュール
日本の定期接種ではおおむね次のように接種します。1回目と2回目は3歳ごろに標準的には6日〜28日間隔で2回接種し、3回目はその約1年後(4歳ごろ)に行います。そして4回目は9歳〜13歳未満の間に第2期接種として実施します。
まとめ
日本脳炎ワクチンを4回接種するのは、免疫を確実につけて長期に維持するためです。初期の複数回接種で免疫を作り、最後の1回(2期接種)で再び免疫を高めることで、子どもたちが長い期間、日本脳炎ウイルスから守られるよう設計されています。日本脳炎は発症すると致死率が高く重篤な後遺症を残す病気であるため、このワクチン接種スケジュールを守ることが、子どもたちの健康を守る上で非常に重要です。

片山クリニック
院長 矢島 秀教
- 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本医師会認定産業医
