睡眠時無呼吸症候群とは?いびきだけではない危険なサイン|原因・症状・検査・治療をわかりやすく解説
「家族から、寝ている間に呼吸が止まっていると言われた」「毎日しっかり寝ているはずなのに昼間眠くなる」「朝起きても疲れが取れない」。このような症状がある方は、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)の可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、浅くなったりする病気です。単なる「いびき」の問題ではなく、高血圧や心筋梗塞、脳卒中、不整脈、糖尿病などの生活習慣病とも深く関係することがわかっています。また、日中の強い眠気によって交通事故や労働災害のリスクも高まるため、早期発見と適切な治療が非常に重要です。
日本では数百万人が睡眠時無呼吸症候群を抱えていると推定されていますが、自覚症状が少ないため、多くの方が未診断のまま生活しています。
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や、呼吸が弱くなる「低呼吸」が繰り返される病気です。
最も多いタイプは「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)」で、患者さんの約9割以上を占めます。眠って筋肉が緩むことで舌や軟口蓋が喉の奥へ落ち込み、空気の通り道である上気道が狭くなったり閉塞したりすることで発症します。
呼吸が止まると血液中の酸素濃度が低下し、脳は危険を察知して一瞬だけ覚醒します。この現象が一晩に数十回から数百回繰り返されるため、本人は長時間寝ていても熟睡できません。
なぜ睡眠時無呼吸症候群になるのでしょうか
最も大きな原因は肥満です。首周囲に脂肪がつくことで気道が狭くなり、睡眠中に閉塞しやすくなります。しかし、日本人では必ずしも肥満だけが原因ではありません。
日本人を含む東アジア人では、欧米人と比べて「あごが小さい」「下あごが後退している」「顔の骨格が小さい」といった特徴があり、やせていても睡眠時無呼吸症候群になる方が少なくありません。
そのほかにも、次のような要因が発症リスクになります。
- 加齢
- 男性(女性でも閉経後は増加)
- 扁桃肥大
- 鼻づまり
- アルコール
- 睡眠薬
- 喫煙
このような症状はありませんか
睡眠時無呼吸症候群では、夜間だけでなく昼間にもさまざまな症状が現れます。
🌙夜間の症状
大きないびき、呼吸が止まる、息苦しくて目が覚める、寝汗、夜間頻尿など。
☀️昼間の症状
強い眠気、集中力低下、仕事や勉強の効率低下、起床時の頭痛、倦怠感、気分の落ち込みなど。
本人は「よく眠れている」と思っていても、家族が異常に気付いて受診につながるケースも少なくありません。特に「いびきが突然止まり、その後大きく息を吸う」という様子は、睡眠時無呼吸症候群を疑う代表的なサインです。
放置すると命に関わることもあります
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、睡眠不足だけの問題では済みません。呼吸停止による低酸素状態と交感神経の過剰な興奮が毎晩繰り返されるため、血圧が上昇しやすくなります。
その結果、次のような病気のリスクが高まることが明らかになっています。
さらに日中の眠気による居眠り運転や労働災害も社会的な問題となっています。
どのような検査を行うのでしょうか
診断では、まず問診を行い、眠気の程度やいびき、家族から指摘された呼吸停止の有無などを確認します。
続いて、自宅で行える簡易検査や、医療機関に一泊して行う終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を実施します。これらの検査では、次のような項目を測定します。
・呼吸の状態
・酸素飽和度
・心拍数
・脳波
・睡眠の深さ
・いびき
これらの測定結果から、「AHI(無呼吸低呼吸指数)」という指標を用いて重症度を判定します。
AHI(無呼吸低呼吸指数)とは
AHIは「Apnea Hypopnea Index」の略で、日本語では「無呼吸低呼吸指数」といいます。睡眠時無呼吸症候群の重症度を判断するうえで、最も重視される指標です。
簡単にいうと、AHIは「睡眠1時間あたりに、呼吸が止まったり浅くなったりした回数」を表す数字です。数えているのは、次の2つです。
- 呼吸が10秒以上止まる「無呼吸」
- 呼吸が浅くなり、血液中の酸素が下がる「低呼吸」
この2つを一晩を通して合計し、睡眠1時間あたりの平均回数として計算します。
AHIによる重症度の目安
AHIの数値によって、重症度は次のように分類されます(成人の場合)。数値が大きいほど、睡眠中に呼吸の乱れが多く起きていることを意味します。
たとえばAHIが30の場合、1時間に30回、つまり平均2分に1回のペースで呼吸が止まったり浅くなったりしている計算になります。長時間ベッドで横になっていても熟睡できないのは、このためです。
この重症度は、どの治療が適しているかを決める大切な判断材料になります。中等症から重症ではCPAP療法が第一選択となり、軽症から中等症ではマウスピース(口腔内装置)が選択肢になることもあります。
睡眠時無呼吸症候群の治療
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療は、「呼吸が止まる原因」と「重症度」に応じて選択されます。適切な治療を受けることで、いびきや日中の眠気が改善するだけでなく、高血圧や心血管疾患などの合併症のリスクを減らし、生活の質(QOL)の向上も期待できます。
CPAP(シーパップ)療法
中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群では、CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:持続陽圧呼吸療法)が第一選択となります。
CPAPは、睡眠中に鼻へ装着したマスクから一定の圧力で空気を送り込み、上気道が塞がらないように保つ治療法です。無呼吸や低呼吸を大幅に減らすことができ、多くの患者さんで日中の眠気や倦怠感が改善します。
治療を始めた直後から「朝の目覚めが違う」「仕事中の眠気がなくなった」と実感される方も少なくありません。また、継続して使用することで血圧の改善や心血管イベントのリスク低下も期待されています。
マウスピース(口腔内装置)
軽症から中等症の患者さんや、CPAPの装着が難しい方では、歯科で作製するマウスピース(口腔内装置)が有効な場合があります。
睡眠中に下あごを少し前へ出した状態で固定することで気道を広げ、無呼吸を軽減します。携帯しやすく、旅行や出張でも使いやすいことが特徴です。
ただし、重症例では十分な効果が得られないこともあるため、睡眠検査の結果を踏まえて適応を判断します。
生活習慣の改善
生活習慣の見直しは、すべての患者さんにとって基本となる治療です。
肥満がある場合は体重を減らすことで気道周囲の脂肪が減少し、無呼吸の改善につながります。わずか数%の体重減少でも症状が軽くなることがあります。
また、飲酒は喉の筋肉を緩めるため、就寝前の飲酒は控えることが望まれます。睡眠薬の種類によっては症状を悪化させることがあるため、服用中の方は自己判断で中止せず、医師に相談してください。
横向きで眠ることで気道が確保されやすくなる患者さんもいます。仰向けで症状が悪化する場合には、睡眠姿勢を工夫することも有効です。
禁煙も重要です。喫煙は気道の慢性的な炎症を引き起こし、上気道を狭くする原因となります。
外科的治療
扁桃肥大や鼻中隔弯曲症など、気道を狭くしている原因が明らかな場合には、耳鼻科で手術を検討することがあります。
(当院では内科治療のみとなります。)
最近の話題
近年、睡眠時無呼吸症候群への社会的関心は大きく高まっています。
その背景には、高血圧、糖尿病、心房細動、心不全などとの関連が次々に明らかになっていることがあります。また、肥満症治療の進歩により、減量が睡眠時無呼吸症候群の改善にも重要な役割を果たすことが注目されています。
よくある質問
Qいびきがあれば睡眠時無呼吸症候群ですか?
必ずしもそうではありません。しかし、大きないびきに加えて「呼吸が止まる」「日中の強い眠気」「朝の頭痛」などがある場合は、一度検査を受けることをおすすめします。
QCPAPは一生続けなければいけませんか?
必ずしも一生ではありません。肥満が改善したり、原因となる病気が治療されたりすることで、治療方針を見直せる場合があります。ただし、自己判断で中止すると症状が再発する可能性があるため、医師と相談しながら継続することが大切です。
Q女性でも睡眠時無呼吸症候群になりますか?
はい。男性に多い病気ですが、女性でも発症します。特に閉経後は女性ホルモンの変化により発症率が高くなることが知られています。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群は、「いびきの病気」ではなく、全身の健康に大きな影響を及ぼす疾患です。睡眠中に繰り返される無呼吸は、高血圧や心筋梗塞、脳卒中、不整脈、糖尿病などのリスクを高めるだけでなく、日中の眠気による交通事故や労働災害の原因にもなります。
一方で、適切な検査を受け、CPAP療法やマウスピース、生活習慣の改善などを継続することで、多くの患者さんは症状の改善が期待できます。
「いびきが大きい」「寝ても疲れが取れない」「家族から呼吸が止まっていると言われた」という方は、早めに医療機関へ相談し、自分自身と大切な家族の健康を守る第一歩を踏み出しましょう。

片山クリニック
院長 矢島 秀教
- 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本医師会認定産業医
