採血の中性脂肪値で内臓脂肪はわかるの?
健康診断の結果を手に取って、「中性脂肪が高いですね」と言われた経験はありますか?
その言葉を聞いた瞬間、「お腹の中に内臓脂肪がたくさん溜まっているのでは……」と不安になる方は少なくありません。当院にいらっしゃる患者さんからも、「数値を見てドキッとした」「内臓脂肪がひどいんじゃないかと心配で」というお声をよく耳にします。
ただ、中性脂肪の数値と内臓脂肪の量は、じつは「似ているようで別のもの」です。正しく理解することで、必要以上に心配したり、逆に見落としてしまったりすることを防ぐことができます。
この記事では、中性脂肪と内臓脂肪の関係について、患者さんによく聞かれる疑問にお答えしながら、わかりやすくお伝えしたいと思います。
そもそも「中性脂肪」とは何か?
中性脂肪(トリグリセリド)とは、食事から摂取した脂質や糖質をもとに体内で作られるエネルギーの一形態です。すぐに使われないぶんは血液中を流れて脂肪細胞へ運ばれ、そこに蓄えられます。
いわば「燃料タンクへ向かう途中のエネルギー」のようなイメージです。
採血で測る「中性脂肪値」は、その血液中を流れている中性脂肪の量を示しています。空腹時(10〜12時間の絶食後)の基準値は150 mg/dL未満とされており、これを超えると「高トリグリセリド血症(高中性脂肪血症)」と診断されます。
「内臓脂肪」とは何が違うのか?
一方、内臓脂肪とは、お腹の中の臓器(腸や肝臓など)のまわりに蓄積した脂肪のことです。皮膚のすぐ下にたまる「皮下脂肪」とは、場所も働きも異なります。
内臓脂肪は代謝が活発で、蓄積が増えると炎症に関わる物質(アディポカインなど)を分泌しやすくなります。これが、糖尿病・高血圧・脂質異常症・動脈硬化といった生活習慣病につながるとされています。「メタボリックシンドローム(メタボ)」の診断に腹囲が用いられているのは、腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映しているためです。
整理すると、
- 中性脂肪=血液中を「流れている」脂肪の濃度
- 内臓脂肪=お腹の中に「蓄積している」脂肪
同じ「脂肪」という言葉を使いますが、測っているものがまったく違います。
中性脂肪が高いと、内臓脂肪も多いの?
「中性脂肪が高い=内臓脂肪も多い」と思われる方が多いのですが、実際はどうでしょうか。
傾向としては、関連があります。食べ過ぎや運動不足・飲酒習慣が続くと、余ったエネルギーが中性脂肪として血液中に増え、それが内臓周囲の脂肪細胞に取り込まれます。その結果、中性脂肪値の上昇と内臓脂肪の蓄積が同時に進むことが多いのは事実です。
ただし、必ずしも一致するわけではありません。
たとえば、検査前日にお酒をたくさん飲んだり、脂っこいものを食べたりすると、一時的に中性脂肪が高く出ることがあります。採血はその瞬間のスナップショットですから、直前の生活の影響を大きく受けるのです。
反対に、内臓脂肪が多めでも、体の代謝やホルモンバランスの関係で中性脂肪値が基準範囲内に収まっている方もいます。特に中高年の女性では、このようなケースが少なくありません。
つまり、中性脂肪値だけで内臓脂肪の量を正確に判断することはできません。数値が基準内だからといって安心とも言い切れませんし、高かったからといってすぐに深刻な状況とも限りません。
中性脂肪値に影響を与える主な要因
中性脂肪値は、日々の生活の影響を受けやすい検査値です。おもな要因をご紹介します。
食事の内容とタイミング
脂質や糖質(とくに果糖や砂糖の多い食品・飲み物)を多く摂った後は、数値が大きく上がります。正確に評価するためには、10〜12時間の絶食後に採血することが重要です。
アルコールの摂取
お酒は肝臓での中性脂肪合成を促進します。前夜に飲酒するだけでも翌日の採血値に影響が出ることがあります。
運動習慣
定期的な有酸素運動は、血中の中性脂肪を分解する酵素の働きを高めます。同じ食事内容でも、運動習慣のある方は値が低くなる傾向があります。
体質・遺伝的要因
生活習慣が良好でも、遺伝的に中性脂肪が高くなりやすい体質の方もいらっしゃいます。
病気や薬の影響
甲状腺の病気、糖尿病、腎臓の疾患、また一部のステロイド薬なども中性脂肪を上昇させることがあります。
内臓脂肪を正確に知るには?
内臓脂肪の量を正確に測るには、CT検査(おへその高さで腹部を断面撮影する方法)が最も信頼性が高いとされています。内臓脂肪面積が100cm²以上になると、生活習慣病のリスクが高まるとされています。
ただし、CTは費用や被ばくの問題もあり、日常的な健康管理として毎年受けるものではありません。
そのため、簡易的な指標として日頃から活用していただきたいのが腹囲の計測です。メタボリックシンドロームの基準では、男性85cm以上・女性90cm以上が「内臓脂肪型肥満」の目安とされています。腹囲はCTで測った内臓脂肪面積とよく相関することが知られており、手軽なセルフチェックとしておすすめです。
医療機関では、数値を「組み合わせ」でみています
当院でも、中性脂肪の値だけを単独で評価することはありません。患者さんの状態を総合的に判断するために、次のような項目をあわせて確認しています。
| 評価項目 | 主な意義 |
|---|---|
| 中性脂肪値 | 脂質代謝・過剰エネルギーの目安 |
| HDLコレステロール(善玉) | 動脈硬化に対する抵抗力 |
| LDLコレステロール(悪玉) | 動脈硬化のリスク |
| 血糖値・HbA1c | 糖の代謝状態 |
| 腹囲 | 内臓脂肪の蓄積度 |
| 血圧 | 心血管疾患のリスク |
| BMI・体重 | 体格・肥満の評価 |
とくに「中性脂肪が高く、善玉コレステロール(HDL)が低い」という組み合わせは、インスリン抵抗性(糖尿病の前段階)や内臓脂肪の蓄積と深く関連しており、注意が必要な状態のサインのひとつです。
一つの数値だけでなく、「全体のパターン」をみることが大切なのです。
中性脂肪を下げるために、まず試してほしいこと
中性脂肪値が高いと指摘された場合、いきなり薬を使う前に、生活習慣の見直しで改善できることが多くあります。
糖質・アルコールを意識して減らす
中性脂肪の上昇には、脂肪より「糖質とアルコール」の影響のほうが大きいことがわかっています。白米・パン・麺類・甘い飲み物・お菓子の食べ過ぎに気をつけましょう。アルコールは特に上がりやすいため、休肝日を設けることが効果的です。
青魚・食物繊維を積極的に取り入れる
サバ・イワシ・サンマなどの青魚に含まれるEPA・DHA(オメガ3脂肪酸)は、中性脂肪を下げる作用が科学的に示されており、週2〜3回の摂取が勧められます。野菜・海藻・きのこ類などの食物繊維も、脂質・糖質の吸収を穏やかにしてくれます。
ウォーキングなどの有酸素運動を続ける
1回30分以上、週3〜5回を目安に継続することが理想的です。運動は中性脂肪を直接消費するだけでなく、インスリンの効きを改善し、内臓脂肪を減らす効果も期待できます。
夜遅い食事を避ける
消費されないエネルギーが脂肪として蓄積されやすくなります。夕食はできるだけ就寝の3時間前までに済ませ、規則正しい食事リズムを心がけてください。
健康診断の数値は「体からのサイン」です
検査の数値は、良い・悪いを判定するためだけにあるのではありません。あなたの体が今どんな状態にあるかを知らせてくれる、大切なサインです。
中性脂肪が高いと言われたとき、過度に落ち込む必要はありません。でも「どうせ一時的なもの」と放っておくのも、もったいないことです。
気になる数値があったときは、ぜひ一度ご相談にいらしてください。血液検査の結果と生活習慣をあわせて確認しながら、その方に合った改善方法をご提案します。一人で悩まず、ちょっとしたことでもお気軽にお声がけください。

片山クリニック
院長 矢島 秀教
- 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本医師会認定産業医
