慢性腎臓病(CKD)
慢性腎臓病(CKD)について知っておきたいこと ~日本人の7人に1人が抱えるリスクと予防法~
慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)は、現在日本で深刻な健康問題となっている疾患の一つです。多くの方にとって身近でありながら、その実態や予防法について十分に理解されていないのが現状です。
今回は、CKDの基礎知識から予防法まで、皆様の健康管理にお役立ていただける情報をお伝えいたします。
腎臓の重要な働き
腎臓は、私たちの体において極めて重要な役割を果たしている臓器です。主な機能として以下が挙げられます:
- 老廃物の濾過・排出:血液中の不要な物質を尿として体外に排出
- 血圧の調節:レニンというホルモンを分泌し血圧をコントロール
- 水分・電解質バランスの維持:体内の水分や塩分濃度を適正に保つ
- 造血機能のサポート:エリスロポエチンを分泌し赤血球産生を促進
これらの機能が低下すると、全身にさまざまな影響が現れてきます。
慢性腎臓病(CKD)とは
慢性腎臓病は、腎機能の低下またはタンパク尿などの腎障害が3か月以上持続する状態を指します。最も注意すべき点は、初期段階では自覚症状がほとんど現れないことです。
進行してから以下のような症状が出現することが多く見られます:
- むくみ(浮腫)
- 息切れ
- 倦怠感
- 食欲不振
- 貧血症状
このため、CKDは「サイレント・ディジーズ(静かな病気)」とも呼ばれており、早期発見が重要な疾患です。
日本におけるCKDの現状
患者数の実態
厚生労働省の2023年「患者調査」によると:
- 治療中の患者数:約66万6,000人
- 推定患者数:約1,480万人(成人の約7〜8人に1人)
この数値が示すように、実際に治療を受けている患者数と推定患者数には大きな開きがあります。多くの方が未診断、または適切な治療を受けていない状況にあることがうかがえます。
国際的な位置づけ
日本におけるCKDの有病率は14〜15%程度とされ、これは決して珍しい疾患ではなく、多くの方が罹患する可能性のある病気であることを示しています。
CKDの主要な原因
日本におけるCKDの原因として、以下の生活習慣病が特に重要です:
糖尿病
糖尿病の合併症として発症する糖尿病性腎症は、日本における透析導入の最大の原因となっています。血糖コントロールの改善により予防・進行抑制が可能です。
高血圧
持続的な高血圧は腎血管に負担をかけ、腎機能低下を引き起こします。また、腎機能低下により血圧が上昇するという悪循環も生じやすくなります。
脂質異常症・肥満
動脈硬化の進行により腎血流が悪化し、腎機能障害につながります。
喫煙
喫煙は全身の血管に悪影響を与え、腎臓の微細血管にも損傷をもたらします。
CKDの進行度分類
CKDは腎機能(eGFR値)に基づいて以下のように分類されます:
- G1:90以上(正常または高値、腎障害の存在が必要)
- G2:60〜89(軽度低下、腎障害の存在が必要)
- G3a:45〜59(軽度〜中等度低下)
- G3b:30〜44(中等度〜高度低下)
- G4:15〜29(高度低下)
- G5:15未満(末期腎不全)
G3以降では進行が加速する傾向があり、より積極的な治療介入が必要となります。
早期発見のための検査
CKDの早期発見には、定期的な健康診断における以下の検査が不可欠です:
尿検査
- 尿蛋白:腎障害の早期指標
- 尿潜血:腎疾患の可能性を示唆
血液検査
- 血清クレアチニン値:腎機能の指標
- eGFR(推算糸球体濾過量):より正確な腎機能評価
eGFR60未満または持続的な蛋白尿が認められる場合は、腎臓専門医への相談をお勧めします。
医療体制と地域格差の課題
現在、CKD対策における課題として医療資源の地域格差が挙げられます:
- 都市部と地方での腎臓専門医数の格差
- 透析施設の偏在
- 専門的治療へのアクセスの差
これらの課題解決のため、かかりつけ医と腎臓専門医との連携体制の構築、地域医療ネットワークの強化が進められています。
CKD予防・進行抑制のための生活習慣
1. 定期健診の受診
年1回以上の健康診断を受診し、尿検査・血液検査の結果を適切に評価することが重要です。
2. 食事療法
- 減塩:1日6g未満を目標とした塩分制限
- 適正なタンパク質摂取:過剰摂取を避ける
- 適正エネルギー摂取:肥満の予防・改善
3. 運動療法
適度な有酸素運動(ウォーキング、水中歩行など)により、血圧改善や体重管理を図ります。
4. 禁煙
喫煙は腎機能悪化のリスク因子であり、禁煙は腎保護効果が期待できます。
5. 基礎疾患の管理
糖尿病、高血圧、脂質異常症などの適切な治療継続が重要です。自己判断による治療中断は避けてください。
6. 薬物使用の注意
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)や一部の健康食品・サプリメントは腎機能に悪影響を与える場合があります。服用前に医師・薬剤師にご相談ください。
医療機関との連携
CKDの管理には、患者様と医療従事者との継続的な連携が不可欠です:
- 定期的な受診による病状評価
- 服薬指導の遵守
- 生活指導の実践
- 症状変化の早期相談
まとめ
慢性腎臓病(CKD)は、日本人の約7人に1人が抱える身近な疾患でありながら、初期には症状が現れにくいという特徴があります。
重要なのは、症状が出現する前の早期発見と適切な予防・治療です。定期健診による早期発見、生活習慣の改善、基礎疾患の適切な管理により、CKDの発症予防や進行抑制は十分可能です。
気になる症状がある場合や健康診断で異常を指摘された場合は、お早めに医療機関にご相談ください。皆様の腎臓の健康を守るため、当院がサポートいたします。

片山クリニック
院長 矢島 秀教
- 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本医師会認定産業医
