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肝のう胞・肝血管腫

肝のう胞と肝血管腫:良性とはいえ見逃せないポイント — 原因・診断・治療・ケア

 肝のう胞と肝血管腫は、どちらも肝臓にできる「良性」の病変(悪性ではないもの)ですが、それぞれ性質・診断・治療の考え方が異なります。健康診断などで指摘されることが多いため、「本当に大丈夫か」を理解しておくことはとても大切です。

肝のう胞とは何か

 「肝のう胞(かんのうほう)」とは、肝臓の中に液体がたまった袋状の構造のことを指します。のう胞(cyst=シスト)とも呼ばれます。ほとんどのケースでは体への影響は小さく、無症状で見つかることが多いです。

分類と原因

 肝のう胞にはいくつかタイプがあります。たとえば:

  • 単純性肝のう胞:最も頻度が高く、1個〜少数個できるもの。壁が薄く、中は透明な液体。普通は問題なし。
  • 多発性肝のう胞症(ADPLD:Autosomal Dominant Polycystic Liver Disease):遺伝性でのう胞がたくさんできるタイプ。腎臓にも嚢胞が多数できる「常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)」に伴うことがある。
  • 感染性肝のう胞:のう胞が細菌などに感染すると炎症を起こすことがある。典型的には発熱や腹痛などを伴う。
  • 寄生虫性の嚢胞:日本では非常に稀ですが、「エキノコックス症」などが原因になることがあります。

症状

 多くは無症状で、人間ドックや他の検査の際に偶然発見されます。ただし、嚢胞が大きくなる、数が多くなる、位置によって他の臓器を圧迫する場合には以下のような症状が出ることがあります:

  • 右上腹部の違和感・圧迫感
  • 食欲低下、満腹感
  • 吐き気や嘔吐
  • 腹部の膨満感
  • 呼吸がしにくくなることも(肝臓の拡大で横隔膜を押すなど)

診断

 診断には主に画像診断が用いられます:

  • 腹部超音波(エコー)検査:まず使われることが多く、嚢胞の形・大きさ・内部構造(エコーに「浮遊物」や"スラッジ"があるか)などを観察します。
  • CT や MRI:嚢胞壁や内部構造、周囲との関係を詳しく調べます。造影も使われることがあります。

治療と管理

 通常は「経過観察」が基本です。症状がない限り、定期的な画像検査で大きさ・変化を追うことで十分なことが多いです。

しかし、以下の場合には治療が検討されます:

  • 嚢胞が非常に大きく、腹部の圧迫感や痛みがある
  • 嚢胞が感染を起こした
  • 嚢胞が破裂したり、他の臓器に影響を及ぼす可能性がある
  • 嚢胞の数が多く、生活の質を大きく損なっているケース(多発性肝のう胞症)

治療方法には:

  • 嚢胞内容穿刺吸引・硬化療法(液体を抜いて、のう胞の壁を縮ませる薬剤を入れる)
  • 嚢胞開窓術(嚢胞を切開し、中の液を外に流すようにする手術)
  • 腹腔鏡を用いた手術など低侵襲手術も可能な場合がある

肝血管腫とは何か

 肝血管腫(かんけっかんしゅ;hepatic hemangioma)は、肝臓の血管の塊(血管が集合・拡張してできたもの)で、「海綿状血管腫」と呼ばれることもあります。良性であるため、多くは治療を必要としません。

発生頻度・特徴

  • 日本では成人の数パーセント、健康診断などで偶然見つかることが多い。
  • 男女比では女性に多い(およそ男性:女性 = 1:3)という報告があります。中年以降に見つかることが多い。
  • 多くの場合は直径数ミリ~数センチ程度。5cm以下がよくあり、10cmを超えるような「巨大血管腫」は稀。

原因

 原因そのものは完全にはわかっていませんが、先天的な血管構造の異常、また女性ホルモン(エストロゲン)の影響で大きくなることがある、という知見があります。妊娠やホルモン補充療法との関連が報告されるケースもあります。

症状

 多くは無症状で、生活に支障がないことがほとんどです。

ただし、以下のような状況で症状が出ることがあります:

  • 腫瘍が大きくなってきて、周囲の臓器を圧迫する → 右上腹部の痛み・違和感・お腹が張る感じなど
  • ごく稀に、血管腫が出血することもあるが、非常にまれです。

診断

画像診断が中心です:

  • 超音波検査(エコー):血管腫の典型的なエコー所見があれば診断に至ります。しかし悪性疾患の除外目的で追加検査が必要なこともあります。
  • CT(造影CT):特に造影剤を使った複数相撮影で、造影パターンが血管腫特有のもの(造影剤が徐々に染まっていくパターン等)を示します。
  • MRI:血管腫内の流れや血管構造、T2強調像で明るく映るなど、より詳細な情報が得られます。

 生検(組織を針で取るなど)は、出血リスクがあるため、通常は行われません。

治療と管理

治療を要するかどうかは、以下の点を考慮して判断されます。

  • 腫瘍の大きさおよび増大傾向
  • 症状の有無(痛みや圧迫感など)
  • 出血などの合併症リスク
  • 患者さんの希望および全身状態

 通常は「経過観察」で十分です。定期的な画像チェックをして、サイズの変化や新たな症状を確認します。

 症状があり、病変が非常に大きいか、合併症が考えられる場合には、外科的切除が検討されます。

まとめ

 肝のう胞・肝血管腫は、多くの場合「良性」であり、日常生活に大きな支障をきたすことは少ないものです。ただし、無視してよいものではなく、定期的な画像検査でのフォローや、症状の出現時には速やかな対応が必要です。

 特に「多発肝のう胞症」など、嚢胞の数・分布が非常に多いケースは治療選択肢が複数あり、患者さんの状態・希望に応じて慎重に治療方針を決める必要があります。

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